これはシンプルにマウントなんですが…
ドラマ『マンダロリアン』はDisney+(以下D+)のローンチタイトルとして、2019年11月より配信されました。当時、日本はDisney+のサービス提供対象外だったので、同年末にディズニーデラックスで配信開始されるまでおあずけを食らっていたんですね。
11月時点ではまだ国内配信の告知もなく、由々しき事態。何がなんでも観たかったので、僕は本国D+に加入して視聴していました。今では当たり前に本国と同タイミングで新作を楽しんでいますが、『マンダロリアン』シーズン1をリアルタイムで楽しんでいた日本人は確実にマイノリティです。
毎週金曜に1話ずつ配信で、Chapter 7の配信日は“かの”EP9の公開日前日。世間がなんとなくソワソワしているなか、「何が来ようと、僕にはマンダロリアンがあるもんね」みたいな妙な余裕を得ていたのでした。
ちなみに、日本では展開していないながら、本国版D+にはなぜか日本語吹替版があり(日本語字幕はなし)、言語の壁も気にせず視聴できたのでした。ゆえに僕の中ではマンダロリアン=阪口周平さんのボイス。
『マンダロリアン』を決定づけたChapter 3
そんな『マンダロリアン』をChapter 1ラストの衝撃、ジャワが大量でウキウキのChapter 2……とそれなりに楽しんでいたのですが、贅沢を言えばどうにも決定打に欠けます。それもそのはずで、続くChapter 3までがひとつのストーリーアークをなしており、これ無くしては結末を失した物語。序盤の最大のクライマックスにして……思い返してみても、「Chapter 3: The Sin」はベスカー・アーマーのように燦然と輝くマイベストなエピソードなのです。
そんな傑作回を『マンダロリアン・アンド・グローグー』から入った方とも分かち合いたく、当時の感覚で振り返ってみましょう。

いまになって遡って観るこの最初期のエピソードとリアタイ当時との決定的な違い、それは「マンドーの素性がわからない」、コレ!これに尽きます。
元を辿れば、あのアーマー姿で想起されるのは賞金稼ぎのボバ・フェット。今でこそ若い衆を従える気のいいダイミョウとなられましたが、初対面時はヴィランだったわけで。『クローン・ウォーズ』期に垣間見えたマンダロリアンたちのバックボーンも、その属性を善悪で単純に割り切れるものではありませんでした。
それゆえに、端々にザ・チャイルドとのハートフルな交流があったとはいえども、マンドー自身の本懐は見えません。イメージソースであるウエスタンふうに言うなれば、GoodなのかBadなのか、はたまたUglyなのか……Chapter 2終わり時点では決定的には明かされていませんでした。
理屈なんて、感情で超えていけ
アーヴァラ7での稼業を終えて、無事に拠点惑星ネヴァロへと帰還するマンドー。それはつまり、ザ・チャイルドとの別れを意味します。積み重なる不穏な予感は的中し、マンドーは流されるように帝国の残党へと引き渡し。名残惜しそうなチャイルドの目線もむなしく、そこに現れるサブタイトル『The Sin』……ああ、なんと無慈悲な。そもそも事前予告にもおらずサプライズなキャラクターだったチャイルドがこの先も生き残るという保証はありません。これはやったのか、やっちまったのか?
サプライズといえば、この回でマンドーは全身ピカピカのベスカーアーマーに衣替え。いまやこちらがスタンダードですが、事前情報では最初の2話で着用していたブラウンのアーマーしか公開されていませんでした。初見時は「なんか、単色で地味だな……あと動きづらそう」という印象(しかし、その後に手にしたオモチャは数知れず……)。

マンドーはチャイルドのことを一刻も早く忘れようと、カルガから新たな仕事を受託。愛機レイザークレストで星を発とうとしますが……。ここで“シフトノブ”の演出!心憎い!
理屈を感情が超えていく瞬間です。賞金稼ぎとしての安寧は、このまま黙って仕事に従事すること。しかし、彼の感情がそれを許さなかった。僕は普段けっこう理詰めで生きているタイプの人間なのですが、だからこそ創作の世界に求めるのはこういう瞬間なんですよ。「自分はこういう瞬間に感動できるぞ!まだまだ人間やってるぞ!」と。
同時に、上から押しつけられる規範へ自分の正義でNOを突きつける瞬間というのは、なんだか非常に「スター・ウォーズ(以下SW)的」じゃないでしょうか。これはマンドーただひとりの反乱でもあります。
俺が、俺たちが、マンダロリアンだ!
アクションにも痺れました。“多勢に無勢”を必殺仕事人ムーブと装備のびっくりギミックでひっくり返していく展開。実写ではやはりボバ・フェットやその父ジャンゴが、立ちはだかる敵としてお披露目してきたようなウェポンの数々。それが今!最高にアツい使われ方をしている!と思いきや、ホイッスリング・バードとかいう『マクロス』に出てくるミサイルみたいな軌道で打ち込む奥の手なんかも出て、ここだけでも失神寸前でして。
マンドーはチャイルド救出に成功。しかし、先の依頼時に「(賞金稼ぎ)全員に配った」というチャイルドのトラッキング・フォブが次々と明滅……『ジョン・ウィック』だ!
SWで近年の作品をオマージュした演出があることへの驚きとともに、当然スマホなんかないSW銀河への落とし込みのスマートさ、なにより見栄えのクールさに感激です。
カルガと賞金稼ぎたちに追い詰められ、「ここはまたフォースで難を逃れるか?」などと思うも束の間、地下に隠れていたマンダロリアンたちが助けにやってきます。これもまた、理屈を感情が超える瞬間。このドラマはマンドーの名を冠した作品でありながら、銀河に足跡を残さんとする『THE MANDALORIAN』ひとりひとりの物語なのだ!お前らみんな主役だ!(拡大解釈)
反目しながらも、窮地にはマンドーの道を開くパズ・ヴィズラの勇姿が眩しい。今やファン同士のご挨拶になっている「This is the Way.」で通じ合うのがまたグッときますね。
卑しきグリーフ・カルガの生き延び方もクラシックでナイス……からの、マンドー達が飛び立っておしまい。2兆点!!!

まるでSWとの出会いのように…
思えば、自分のSWとのファースト・コンタクトも初見のワクワクに満ちたものでした。好きなSF映画のVHSを擦り切れるほど見ていた子どもの頃、友達の母親が「これも好きなはず」と貨してくれたのがSW(旧3部作)だったのです。なんなら公開当時のリアタイ勢よりも事前情報なく観た『新たなる希望』のビジュアルショックたるや。我ながらとてもいい出会いをしたなと、そのせいでいまだに抜け出せずにいるんですが。
『マンダロリアン』のChapter 3はまさにそんな、初めて出会った素性のわからないヤツにハラハラさせられる展開、まるで銀河の未踏を歩むような楽しさがありました。こういうものは2度目以降の視聴では味わえない、不可逆なものだからこそ語っていきたい。知ってから観る楽しみもあるので、どちらがイイとかではないんですけどね。

これからもシリーズは続いていくので、『マンダロリアン・アンド・グローグー』からハマった方々もぜひリアルタイムで追い続けて、初見の衝撃を食らってください。来年にはまた新作ドラマも映画もあります。毎度ここまでの打率を叩き出してくれるかは保証しかねますが、長く追えば追うほどトータルではいい方に転がるんじゃないかな。そう信じよう、This is the Way.
超余談ですが、ネタバレ配慮勢なのでシーズン1を追っている最中は当然身近な誰とも話すことはできず。海外の“ベビー・ヨーダ”ブームを横目に、SNSで発言できずウズウズしていました。先走って観たとて、これだとつまらんよね。
国内向けに“ベビー・ヨーダ”を大々的に発信したのは自分の観測範囲ではトイショップの豆魚雷さんだったと思います、マテルのぬいぐるみの発売告知で。もちろん買った。